書き物の棚

気が付けばあっという間に3月となり、私は昼夜問わず目と鼻を襲い掛かってくる花粉に連戦連敗しています。ちっさいころからずっとこれなので、もう慣れたといえば慣れたものです。辛いです。


さて、 2月は比較的おとなしくしていた(というより停滞していた)1か月でしたが、3月以降はいろいろと催し物や活動の変化があります。



①3月5日(日)一箱古本市

絶対にしゃちほこばらずにやるぜ!という姿勢が功を奏しているのか、今回で無事計5回目の開催となります。お天気が若干不安な気配ですが、その場合はBOOK PORT CAFE店内での開催を予定しております。

いつもお店の前の道路に面したところに「一箱古本」と冠した箱を置いてそこで古本を売っているのですが、結構通りしなに覗いていかれる方が多いんですよね。そのままご購入していただくこともしばしば。決して往来が多いわけではない道を歩くそういう方々が「なんか今日あそこテント立ってんだけど」ってなってそのままフラッと寄ってみる、そういう市にしていきたいです。

古本市自体は11時から16時まで。カフェ・本屋はいつも通り10時から18時まで開いています。



②3月31日(金)ブックマンション最後のお店番

2020年1月から始めた、吉祥寺にあるシェア型本屋「ブックマンション」を、3月31日をもって辞めます(抜ける、卒業する、退去するetc.のどれがしっくりくるのだろうか)。理由としては、日ごろのたつきである本業に大きな変動があり、生活の中でそちらに専念するウェイトを大きくしたいということで、今年の1月に決めました(茅ヶ崎のBOOK PORT CAFE内の店と西荻窪のBREWBOOKSさんのシェア棚「ブックセラークラブ」は継続します)。

それについてオーナーの中西さんともこれこれこういったことを考えてるんですよって話をしたら、「じゃあこういう資格もいいと思いますよ!」とまったく想像してなかった角度からのアドバイスも貰いました。自分にない視点からの一言はつくづく面白い。3年間、本当にお世話になりました。

ということで、在籍ラストデイにお店番します。毎回何かしらテーマを掲げてお店番していたのですが、今回は「本屋の中にある本屋」と題して、本屋の中に本屋を作りたいと思います。什器から。

開店時間は13時から、閉店時間は考え中です。なるべく長く開けていたい。持っていくたびになんだかんだご好評を博していたアレも持っていこうと思います。



③5月3日(水・祝)~5月24日(水)おもて珈琲二度目の企画

昨秋、茅ヶ崎のおもて珈琲さんにて「読む楽しみ、編む愉悦」という、田畑書店さんの「ポケットアンソロジー」を販売する企画を開きました。この時は私の他に陶と絵の展示もあり、その三者が交叉した合同展「anthology」の片隅で開いていたのですが、手前みそながらとてもいい企画になりました。

そして今回は、同じく田畑書店さんの「ポケットアンソロジー」と、それに加えて昨年同社より発売された『ポルトレ<普及版>』のパネル展を同時開催します。


大島渚、安岡章太郎、城山三郎、大野一雄など、後世にその名を遺す巨匠たちの肖像(ポルトレ)を収めた一冊。これに載せられた写真や文のパネルを展示します。

企画名「肖像(ポルトレ)に近づく」です。

詳細の詰めやチラシ作成などできましたら改めてお伝えできればと思います。少し先の話ですが、こちらもよろしくお願いします。


と、いろいろと企画のお報せをしました。

最後に、企画とは関係なくこれからのこんぶトマト文庫について。

先にも少し触れたように、本業に変動があったため、3月以降はBOOK PORT CAFEへの在店も以前よりは少なくなると思います。具体的に言えば、おそらく水曜日の在店が難しくなります。書評もあるので日曜日は引き続き在店していくよう予定組みます。

もとより週5日本業+週2日在店というバランスだったのは、自分にはちょっと余裕がなさ過ぎたなと今更ながらに反省点です。本屋界隈、週休ゼロの人から週休7日の人まで幅広いので、自分に即したやり方をその都度確立させ続けていければと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

一昨年の秋に初めて開催し、昨年は4ヶ月に一回のペースで計3回開いた一箱古本市。

今年も変わらず3月、7月、11月の年3回やります!


一回目は3月5日(日)の11時から。

申し込みの締め切りは2月15日(水)となります。


今回から少々要項の変更がありますのでご注意ください。

ざっくり言えば募集が抽選から先着となりました。また、ひとつ前の古本市に参加いただいた方は次の回では補欠での受付と扱わせていただくことを明記しました。

以下要項をご確認の上ご応募お願いいたします。

ご応募お待ちしております!


2022年以前の募集要項と以下の点が異なっております。

・募集が先着順となりました。

・出店された方は次回参加希望の際に補欠とさせていただく旨を明記しました。

その他につきましては変更ありません。



〈開催要項〉

開催日:3月、7月、11月の第一日曜日

開催時間:11時~16時

参加費:500円(BOOK PORT CAFEのワンドリンク付)

募集人数:先着3組 各回ごとに募集を行ないます。

     ひとつ前の市に出店された方は補欠での受付とさせていただきます。ご了承ください。

開催場所:BOOK PORT CAFE店頭

雨天:店内にて開催予定

屋号:決めてきていただけると楽しいです。


〈販売するものについて〉

後述する寸法の箱の中に入る分の古本のご用意をお願いします。

それ以外に、雑貨など販売したいものがある方はあらかじめご相談ください。


〈古本販売について〉

箱のサイズ:タテ22cm×ヨコ30cm×タカサ15cm

      この箱は当方で用意します。個別にご用意していただく必要はありません

売り場:BOOK PORT CAFE店頭に3か所用意します。

    それぞれ異なる形態の売り場となります。場所は当日開催前に抽選を行ないます。

会計方法:BOOK PORT CAFEにて一括 古本市終了後に清算

スリップ:売値と屋号もしくは名前を書いたスリップをあらかじめ挟んできてください。

     決まった形式はありません、お好きな紙・レイアウトで作成してください。

スリップとは…新刊書籍に挟まったりしている、書誌情報などが記載された細長い二つ折りの紙。短冊とも。


〈ざっくりとタイムスケジュール〉

10時半~ 箱主集合、場所抽選

11時~ 開始

この間ずっと在店している必要は無く、その間の箱管理は主催側が代行します(雑貨等を販売される方は商品管理・会計を行なう方の常駐をお願いします)。

16時 終了 ~売り上げ清算


〈注意事項〉

・取り扱う本は古本のみとさせていただきます。

・公序良俗に反する本、人権の侵害を目的とした本、差別の煽動を意図した本を販売しないようお願いします。あらかじめ選書の内容について申請をいただく必要はありませんが、この事項に触れる場合、出店をお断りすることもあります。ご了承ください。

・新型コロナウイルスの感染状況によっては主催者判断で中止とする可能性があります。ご承知おきください。

以上の要項を確認した上で、

①名前(本名以外可)

②連絡先

以上2点をkontomabunko@gmail.com、またはこんぶトマト文庫のツイッターもしくはインスタグラムのDMへご連絡ください。


みんなで古本を楽しみましょう。


主催:こんぶトマト文庫

協賛:BOOK PORT CAFE

本年もどうぞよろしくお願いいたします。


この挨拶は果たしていつまで有効なのだろうかとふと思う。

まず、12月31日は早すぎる。なにせその日の本年ってものがあとせいぜい二十四時間しかないのに、何を一体よろしくするのだろうか。でもほんの10分ほどの講座を受ける前にもよろしくお願いしますと挨拶するのだから、別に大丈夫と思えば大丈夫なのかもしれないとふと思った。今日は近くの公的な体育館にあるトレーニング室利用希望の講座を受けてきたところだ。1回300円。とても安い。

1月1日は当然いいだろう、むしろどうせ言うのなら早ければ早いほど適用される「本年」が長くなるからとてもお得でとても良い。特段そういうよくわからん浅ましさが由縁ではなかったはずだけど、新年になった途端に友人へキャリアメールを送っていた頃があった。誰しも同じことを考える様で、なかなかセンターに繋がらず年明け早々やきもきした覚えがある。この前の年越しは、年始早々のお仕事の準備がやれやれ何とか終わったとポテチを食べていたら過ぎていた。次第にそういうものになっている。それで特に差し支えない者になっている。

1月3日くらいまでならいっこうに気にすることもないだろう。三が日、という言葉もあるくらいで、この辺まではわりと元旦を筆頭とした正月の一味と見られている節がある。とはいえ、1日は朝からBOOK PORT CAFEにいたし2日は午前中から吉祥寺、そして3日は本業の仕事始めだったから正月も何も特に何も、といったあんばいだった。上司や同僚にはよろしく挨拶した。

1月7日はまだ許されよう。松の内とも言われているし、何より年始は多くの人が帰省などをしていて普段会う人と会わないことがままあり、よろしく挨拶するタイミングがなかなか見つからない。この辺りまでは「まだ新年っしょ」みたいな雰囲気ごり押しで言ってしまうことが出来る。と勝手に思っている。


そして今日は1月11日である。日付的には12日だけどまだ寝てないので11日である。

どうだろう、この頃合い。ちょっと遅きに失した感は否めない。仮に明日会社で会った人、既に仕事始まってるけれど会う機会がなぜかなかった同僚とかに「今年もよろしく」と言われたら、「オッ今か?」といった気持ちにならないだろうか。なりそうな気がする。これが月一定例で来る業者さんなら大丈夫だろう、イレギュラーがない限りはその日が初っ端になるわけなのだから。しかし相手は同じ会社の同僚である。わざわざそっちの部署に出向いてご挨拶というのもなんだか仰々しいから廊下ですれ違った折にでも、と思っていたら全然すれ違わずに今に至ってしまっている。そしてならばこの頃合いに廊下ですれ違った際、よろしく挨拶をするかというと、しない。なんかしない。瞬間、何か言わねばならぬのか?というピリッとした緊張が走るが、もはや互いに日常業務に追われる身、いつまで新年のご挨拶なんてかましてやがるんだとなるので、そのまま伏し目がちに「ッザァース」という表音ギリギリの挨拶を交わしてスッとすれ違う。なんとももんにょりした気持ちになる。


そもそもなのだが。

「相手が昨年親族を亡くしている場合は『あけましておめでとうございます』と言ってはならない」という縛り、これはなかなかどうして厳しくないだろうか。どうやって相手のお葬式事情を把握するのだろうか。かつてはそれが筒抜けな共同体だったからこそ仔細ない話だったのだろうけれど、今やそれは相当な無理ゲーなのではと思う。だから今は「本年もよろしくお願いいたします」だけで通している。相手は気兼ねなくあけまして云々と言ってくる。


10年後にも読みたい本、の続きを進めていきたいと思う一方で、そも書く人でないことは重々承知しているのだけどそれにしても全然筆を進める気力が湧かないな、となってしまったので、とりあえず何か書いてみるか、と書いたものを眺めてみると、スカスカで頼りなくて我ながら笑ってしまう。

少しずつ「10年後にも読みたい本」の紹介を進めていくにあたって、まずはどういう順番で紹介していくのがいいかを考えた。

『最高の三十代 ~Perfect SAN-JU-DAI~』の掲載順にするか、あいうえお順にするか、などといろいろ考えてみたけれど、ものすごく恣意的な順番にすることにした。特にそこに外的な法則性を伴うことは一切せず、まずはこの人次はこの人、とその都度決めていくことにした。必然何となく後回しになる人が出てくるけれど、それはそれで止む無し。むしろそこまで走り切れたら大したものだと思う。

今回この同人誌を作るに至る経緯を十数年単位で考えてみると、そもなんで今自分がここに立っているかを振り返ったときに、まぁそれなりにいろいろとあったわけで、その道中で知り合った人たちの協力があって今の自分があり、これからの自分が出来ていく、その過程でこの同人誌が出来た。なのでそれに則りつつ振り返りつつ懐かしみつつ、一人ずつ一冊ずつ紹介していこうと思う。

果てしなく私的な話の連なりになるけれど、そも土台がそういうものなのでよしとする。


最初に紹介するのは、舟橋孝裕。呼称、舟橋さん。

あくまで現時点から見た結果論ではあるけれど、この人と出会っていなければ僕は本を売っていないと思う。少なくとも今のような、何かをしつつ何かをする、というような形では。生活の中において「活動」をすることの面白さや面倒さのおおよそは、彼と過ごした時間の中で体得していった。日頃の社会的な日常生活を送るその寸隙を縫ってやれる限りのことをやる、思いついたことは思いつく限りやる、丹精込めて結果失敗したところでじゃあ次もっかいやりゃあいいだろうという気持ちでやる、今の活動に通じるそれらの精神の根幹は、きっとおそらくこの時期にある。

彼はエレクトリック・ベースギタリストであり芝居を打つ人であり、総じてエンターテイナーだった。それにくっついていた時分は特に自分で何かをやろうとはしていなかった。そんな必要はなかった、目の前の男がだいたいなんかやっているからだ。

あの時期は紛れもなく、私の人生の中における青春だったと思う。

この辺りを掘り始めると小冊子くらいは軽く出来上がってしまうので割愛する。というよりご本人が10年ほど前にワンマンライブ(バンドのではなく自分のワンマン)で実際に冊子を作っている。あれもまたスゴイ一冊。


そんな青春を共にしていた彼が選んだ「10年後にも読みたい本」は、霧の中/佐川一政だった。

つい先日亡くなった、とある猟奇的な殺人事件の犯人が綴った小説。有名な事件なので名前だけでもピンときた人がいるかもしれない。念のため補足すると、彼がこれを選定したのは亡くなるより前の話だ。

正直、とても読みにくかった。グロテスクな描写が受け付けなかったからではなく(そういう意味で言えば平山夢明は二度と読みたくないキツイ)、前半部に記された、著者の「人付き合いの不器用具合」の描写がとても痛かったからだ。共感性羞恥というやつなのだろうか、逐一自分の過去の拙い所業がそこに列挙されているような感覚に陥り、なかなか頁が進まなかった。

著者(と呼ぶべきか犯人と呼ぶべきか)のことを名前くらいは知っていたけれど、元々日本文学の研究をしていた人で川端康成を専攻していて、その所以もあってパリにいたことをこの本で初めて知った。これから川端康成を読もうと思っている身として、川端康成の女性観や巻末の付録が参考になったのが棚ぼただった。先日観た『狂った一頁』の事にも少し言及されていた。あれも大変に怖い映画だった。閑話休題。


これは解る人にはすんなり了承いただけるだろうし、全く受け付けない人には猜疑の眼を向けられるだろう発言であることは承知しているけれども、人は時として猟奇的な描写に心惹かれてしまう。実際にそれを行ないたいとか行為の妄想に耽りたい、といったわけではない。ただ何となく、誰かが仕出かした猟奇的な話へと陰の力で引き摺られ、虚ろに爛爛とした眼で真剣にそれらを読み漁る。そういうのにかぶれてしまう時期がある人にはある(サメ映画に求める類の感覚とは違う。あれは言わば「陽のグロ」だ。どれだけ派手に血潮をまき散らすかになぜか心血を注いでいる)。

かくいう私も、いわゆる"そういうの"が夥しい数載せられた個人ホームページを読んでいた時期があった。朧げな記憶を頼りに検索してももう出てこなかったから、きっとなくなってしまったんだと思う。確か「MONSTER」という名前のサイトだった。


これを10年後にも読みたい本に選んだ、ということについて、本人も少し自分のことながら懐疑的だった。でもこの一冊が良いと私は思った。

今や30代も後半でしっかり40代が見えてきた彼にも、この一冊に虜になった時期が間違いなくあった。元より本に限らず、たとえ今の自分が手にしなくなった類のものに為ったとしても、それを欲した時期が自分にはあり、それは容易く改変・美化されてしまう己の緩やかな脳味噌とは違い、一切の形を変えずに今も先も存在し続ける。あいにくと今は目を背けたくなるような代物かもしれない。でもそれを手にした自分も紛れもなく自分であり、それを経たことによって今の自分たり得る。そういう意図において、遠大な人生の一つのランドマークとしてこの本を根差しておくことは、とても良いと思った。



彼が『最高の三十代 ~Perfect SAN-JU-DAI~』に寄稿してくれたのは、『最高の30代殺人事件』。古畑任三郎が大好きな著者による自己探究的エンターテイメント小説、最後の1行まで目が離せない。大変陳腐なPR文だがついに使ってしまった。

こちらのブログにもあるように、楽しんで書いていただけた様子が伺えるものが送られてきて、一読して「やっぱ舟橋さん面白れぇわ」となったのをよく覚えている。

この度こうやっていろんな人に声掛けした理由のひとつに「私自身は何かを生み出すことがとても苦手だから」というものが挙げられる。ゼロからイチを出すことが大変に不得手だ。だからそれを当たり前にできる人たちのことを無条件に尊敬する。そういった意味では、今回寄稿してくれた方全員を私は尊敬している。



『最高の三十代 ~Perfect SAN-JU-DAI~』は下記BOOTHでの通販、西荻窪のBREWBOOKS内こんぶトマト文庫の棚で販売しています。

また直接ご購入希望の方は、こんぶトマト文庫のメール、ツイッター・インスタグラムDMでもお受けいたしております。お気軽にご相談ください。

帰宅して晩御飯を作って食べて、本どころか映画もアニメも音楽もろくに集中できず、今の時間に至る。これを書き始めた時点でもうすぐ0時。

読まなきゃならないもの(ああいう理由とかこういう理由とかがあり、ここはまぁ義務的なものがあると見ていい類の本)があり、それらを手当たり次第に手に取って、とりあえず目についたところから数行目で追って、何とか数ページばかり進んだところでギブアップ。みたいなのを10冊ばかり繰り返している。全然頭に入ってこない。

ついでにようやく「10年後にも読みたい本」の続きのブログを書き始めたものの、うっかりタブの×を押してしまって、保存されていなかった文章は何処とも知れぬところへと消えていった。残念ながら自分の頭にはなんとも頼りない程度の断片しか残っておらず、復旧は困難の見通しと言える。諦めてお風呂を入れ始める。


暖かいお茶が唯一の救いかもしれない。

この前名古屋に行った時、覚王山の参道にあるえいこくやさんで買ってきたティーパックのお茶がなかなかどうしてとても良い。元々はBOOK PORT CAFEの店主へのお土産で買ってきたものだったけれど、予想以上にどっさりと入っていたのでおすそ分けしてもらった。色も味もしっかり出るわりに渋みが少なくて飲みやすい。ついでにそこにイチゴジャムを入れる。バラライカの姐さんも飲んでいたロシアンティーだ。冷えたブリヌイは食べたことないけれど冷えたホットケーキなら食べたことはある、確かにあれは度し難い食べ物だ。ああいうものは暖かいものに限る。

コーヒー豆は切らしてしまっている。ずっと使っている、いつからだろう18の頃からだろうか、あのコーヒーミルはそろそろオーバーホールした方が良いかもしれない。いいとこのを買ってもらったもんだから、多分バラしてきちっと掃除したらまだまだ使える。でも買い換えてしまいたいという気持ちもある。私情的に。心情的に。勿体ない気持ちと相反する。


気が付けば0時も回っているし、お風呂もそろそろ溜まってきた。

たまに湯船につかりながら本を読む。賛否両論阿鼻叫喚になりそうな所業だとは思いつつも、わりと好き好んでやっている。主に文庫本。万が一湯船に落としてしまっても精神的ショックが少ないものを選ぶ。講談社の文芸文庫はまず持ち込まれない。なぜなら全部いい値段するから。借り物の本なんてもってのほか。今のところ一度も落としたことはない。今日こそ落としてしまうかもしれない、と思いながら今日も風呂で本を読む。

先日無事刊行しました同人誌『最高の三十代 ~Perfect SAN-JU-DAI~』、その刊行記念イベントとして11月27日に名古屋は吹上の鑪ら場(たたらば)にて「三十路文化祭」を開きました。

このイベントの際に、僕は「10年後にも読みたい本」という展示を予定していました。
ざっくりと言えば、「寄稿者+イラストのみんなに10年後にも読みたいって思う本を選んでもらって全部読んできてそれを並べてポップもつけてみる」というものだったのですが、諸作業の立て込みによる私の頭の中のキャパオーバーを鑑みて、全部ドシャメシャになる前に頓挫させました。今考えてることややらなきゃいけないこと全部をやることは多分無理だと、ならばどれかを削らなくちゃいけないと。いうことで敢え無く。
余談ですが、このリスクヘッジに対して、寄稿者の一人でもあり一時は最多週5日ほどつるむ仲だった舟橋さんから「我々も大人になったね」と言われました。本当にそう思う。お互い20代中頃のバカみたいな無茶はしなくなった。わりと自由やってる今でも思う、あの頃はエネルギーを持て余し過ぎていた。


さて、頓挫させました、とは言いましたが。
実際既に寄稿者の皆様から「10年後にも読みたい本」を選んでいただいていて、選書の幅やその選考基準が面白く、そして何冊かは実際に読んでみて面白いなこれ!となっていて、これをそのままお蔵入りにさせるのはとても勿体無い!と思ったのです。
ということで、全員分となるかは今のところ未知数ですが(主に僕の余力に依る)、ブログにてちょっとずつ紹介していけたらと思います。


まずは言い出しっぺ、こんぶトマト文庫こと私が選んだ「10年後にも読みたい本」です。

二月の椅子 中村薺・著

金沢市在住の詩人、中村薺さんによる詩集です。

この本は2020年9月12日(土)の毎日新聞書評欄にて、現代詩作家の荒川洋二さんが紹介していた本になります。

最近は少しご無沙汰の向きがありますけれど、いっときの毎日新聞書評欄は通常の書店ではそうそう手に入らない直販の本をしれっと紹介していました。あれ本屋さん大変だったろうなと思う。この本もその一冊で、しかも直販どころか私家版のものだというので書評の末尾に個人宅のものと思しき電話番号が載っていました。20年前ならいざ知らず。おっかなびっくり電話しました。

そうしたら中村さんご本人がお出になって、驚きながらええと書評を見ましたと説明し、無事ご購入させていただいた一冊になります。その後改めてご連絡をして、特に詩に長けた人間でもないしきっとこれはなかなかに分不相応な所業だろうと思いながらも、実は私こんぶトマト文庫という本屋をしておりまして云々こんな感じでわーわーやっておりまして云々と説明をして、図々しくも販売用として幾冊かお譲りしていただきました。書いててひどく畏れ多い真似してるなと思います。いつか金沢行かなきゃいけません。


詩は、今なお読み方がわかりません。今なお、なんて言うと長年近しく在ろうとしてきた風に見えますが、実際詩を読もうと意識するようになったのはここ数年で、それまではむしろひどく遠いところにあるものでした。

この本を選ぶことも、もとい先のような経緯でこの本を手にしたことも、果たしてそれは己の本心からなのかチョットした背伸びなのか、その辺りの分別は正直なところわかりません。

ただ、今回のテーマを自分で設定した時、数多思いついた本から一冊を選ぼうと考えた時、三十代の今の自分としては最も未知であり、そしてより深く接していきたいと思う本を選びました。

ものとしての造りが素敵な事も選んだ理由のひとつ。同じく金沢の造本屋、龜鳴屋さんの仕事です。


あとがきに書かれているのですが、この本が造られた年の秋に、中村さんは〈ここのそじ〉を迎えられます。三十代とか10年後とか言ってるはるか先のところにしゃんと立っていて、それでもなおあとがきの静かな文章から湧き立ち上がっている貪欲なまでの探究心に、ただひたすらに脱帽です。果たして私は、あと50年以上先、半世紀を生きてもなおこう在ることができるのだろうか。





『最高の三十代 ~Perfect SAN-JU-DAI~』は下記URL先のBOOTHにて発売中です。

12月7日(水)より数量限定で西荻窪のBREWBOOKS内こんぶトマト文庫の棚でも販売予定です。

また直接ご購入希望の方は、こんぶトマト文庫のメール、ツイッター・インスタグラムDMでもお受けいたしております。お気軽にご相談ください。

『最高の三十代 ~Perfect SAN-JU-DAI~』という本を作りました。

詳細は↓から。

以下寄稿者の紹介と作品を掲載順にしていきます。


ぶんちん

表紙中央の絵にもなってる眼鏡のひと。「まにまに」の一味。先日発売した『生活の批評誌vol.5』にイラストも寄稿している。

『そんなことも忘れていたの ―2022年8月6日の日記―』

締め切り日直前に書かれた、ある日の出来事と照らされた煩悶の在りどころ。何も偽っていないはずなのに、感情にも行為にも噓臭さが浸漬している。筆をおくことも視野に入れたことも告解する日記が行きついた場所は、この一冊の冒頭を飾るに相応しいものだと思う。



斜田章大

劇団「廃墟文藝部」の作演出をしているひと。作家なので仕事が早い。修正もない。受領する側として最高のひと。

『三十路オブザデッド』

二十九歳を終えて三十歳を迎える夜に僕が想起する、亡き祖父と折り鶴の思い出。遊び人だった祖父には自身も把握していないほど多くの孫がいて、僕の事を孫としての順番で「八番」と呼んでいだ。過去と現在の静かな交差に未来を見る短編小説。



こんぶトマト文庫

私です。

『その血のさだめを袖にする為の』

裏話。当初はもっとちゃらんぽらんなことを書いておこうと思っていたのですが(ジモティーでもらったベッドで寝たら背中を痛めた話とか)、脳ミソの隘路に陥ってそういうのじゃないなと思い直して全部没にして出てきた結果が、"家族"を主題に沿えた怨嗟と憎悪と希望の煮凝りのようなものでした。後半部はイトイ圭さんの漫画『おとなのずかん改訂版』の話になります。



KANAMORIN

こんぶトマト文庫のロゴを作ったひと。「白線の内側」の一味。いつか神奈川か東京かのどこかでライブいけばなパフォーマンスやってくれないかと思っている。

『たゆたう』

写真と言葉の協奏。言葉を生業にしているわけではなく、むしろその不確実さに対して慎重な姿勢を持つ著者が紡いだ言葉には、とても実直で剛健なもので存外な心地よさがある。



舟橋孝裕

ベーシスト兼エフェクター蒐集家兼夫兼父親なひと。「白線の内側」の一味。子煩悩なグッドダディ。

『最高の30代殺人事件』

ある日俺は『俺』に呼ばれた。いわく「30代の『俺』たちで集おうじゃないか」。人里離れた別荘地へ呼び出された俺は、そこで各年齢の『俺』と出会う。主催の『俺』が「皆で存分に話し合って30代最高の瞬間を決めようじゃないか」と声高に宣言したその夜、ひとりの『俺』が殺された。サスペンスでもなくミステリーでもない、『俺』による『俺』のための『俺』の小説。



ぴよ丘すぐる

ホビー好きでコスプレもしているひと。絵を描いたりユーチューバーやったり、それにつけても超人気質。

『ダイホージョー!銀しゃりプリンセス』『キラメキウールドリーマー』

女児向けナンセンスえっちまんが2本立て。「ハッピーなものを作りたかったから」という理由一つで生まれた快作。放っておけば大気圏外まで勝手に飛んでいきそうなほどに推進力がある作品を、強靭なあとがき一つでがしっと地に足つかせているバランスが秀逸。



かしやましげみつ

こんぶトマト文庫と名付けたひと。演劇ユニット「孤独部」「あたらしいまち」主宰のほか、「白線の内側」の一味であり「まにまに」の一味。レンタカーで車中泊をしながら八重山諸島を巡るアクティブな旅好き。

『目覚めたら異邦』

ある日、目覚めたらそこは慣れ親しんだ町ではなかった。仕事を終え、自宅に帰り、部屋のベッドへ横になったはずだった。しかし、目覚めたそこは見知らぬボロいドミトリーだった。直感的に思った、ここはインドなのではないか。うだった頭で見る夢のような、どこかそっけない優しさと諦めにも似た希望を感じられる異邦譚。



瀬乃一郎

音楽をつくるひと。「白線の内側」の一味。先の「廃墟文藝部」の劇伴のほか、ソロ名義AMAREISなどでも楽曲を発表している。ZABADAKで盛り上がる。

『アンダーカレント』

真っ暗な寝室で、毎夜物思いに耽るわたし。なかなか寝付かせてくれない、心身の奥底に流れる音に耳を向ける。長い暗闇の果てに明滅する、きっとそれが夜明けであるものを抱きしめる。



吉村桜子

たまに絵をかくひと。活動不定期ゆるふわ演劇ユニット「まにまに」の一味として作演出もしている。

『みづいろの日』

ある日の夜の一幕、追懐と夢想のマーブル模様、その淡いを優しく湛えたままに日々を生きる、記録のような童話のような、まちの一景。



赤井千晴

怪奇紙芝居をしているひと。何を話し始めても怪談が始まる雰囲気が出る。

『「最高の三十代に至るまで」』

今、最高の三十代を迎えている。しかしそれに至るまでの幼少期、十代、二十代の人生は負が積もりゆく地獄だった。凄絶な半生を堂々と綴り切った自叙記。



コマダカズキ

ドラムを叩くひと。プログレッシブ暗黒青春パンクバンド「パイプカツトマミヰズ」の一味のほか、ヒップホップのソロユニット「チリアクタ」として活動中。多芸。

『書評 梨野飛礫『ヒラリーステップ』』

架空の作家、梨野飛礫の新作『ヒラリーステップ』の書評。過去の二作品から見えてくる梨野作品に通底したテーマを踏襲する傍らで、新たな「最高」に挑み続けることを称揚する新作を紹介する。



@yugapanda

自動生成される音楽を作っているひと。「まにまに」の一味。arthurが好き。

『メイキングオブ最高の三十代ジェネレーター』

今回のテーマは「最高の三十代」であって、それに則って書かれた他の人たちの文章は当然「最高の三十代」なわけであって、ならばその文章を用いて作られた音楽は当然「最高の三十代」に適っているわけだ。という理屈から生まれた、「最高の三十代」の音楽の作り方。



表紙や中の挿し絵を書いてくれたひともご紹介。


河合真維

イラストレーターをしているひと。「まにまに」の一味。羽海野チカが描くキリンのようなひと(本当に描いてるかどうかは知らない)。


以上です。

個々のパーソナリティを知っている人にはもちろんのこと、一切合切そうでない人にも楽しんでもらえる1冊になったと思います。


11月27日からBOOTHにて発売予定となります。税込み1000円+送料180円となりますが、直接ご購入希望という方がいましたらこんぶトマト文庫のツイッター・インスタ・メールどれからでも大丈夫ですのでご連絡ください。

友人たちとの共作で、本を作りました。

タイトルは

『最高の三十代 ~Perfect SAN-JU-DAI~』

です。

〇12名の寄稿者が " 最高の三十代 " をテーマに、小説・漫画・詩・エッセイなど自由に書き下ろしたアンソロジー

はじめに

ぶんちん 『そんなことも忘れていたの -8月6日の日記-』

斜田章大 『三十路オブザデッド』

こんぶトマト文庫 『その血のさだめを袖にする為の』

KANAMORIN 『たゆたう』

舟橋孝裕 『最高の30代殺人事件』

ぴよ丘すぐる 『ダイホージョー!銀しゃりプリンセス』『キラメキウールドリーマー』

かしやましげみつ 『目覚めたら異邦』

瀬乃一郎 『アンダーカレント』

吉村桜子 『みづいろの日』

赤井千晴 『「最高の三十代に至るまで」』

コマダカズキ 『書評 梨野飛礫『ヒラリーステップ』』

@yugapanda 『メイキングオブ最高の三十代ジェネレーター』

おわりに


A5判|縦書き|164頁

企画:最高の三十代制作委員会

発行:2022年11月27日

価格:1,000円(税込・送料別)

装画:河合真維



発売は直接お渡しのほか、BOOTHを介した通販を予定しています。現在のところこんぶトマト文庫店頭で取り扱いする予定はありません。

詳しくは下記特設ページより(11月20日現在ではまだBOOTH開設していないのでもう少々お待ちください)。

寄稿者の紹介はちょっと長くなるの別の記事にまとめました。なんかWikipediaみたいですね。



以下、本誌冒頭の序文を掲載します。


この本は「最高の三十代 〜Perfect SAN-JU‐DAI〜」をテーマに、音楽や演劇などを介して知り合った友人たちに寄稿を依頼し、各々から出てきたものをまとめた一冊になります。作品の形態は一切を問わず、またページ数も上限を定めた上で各々の裁量に委ねました。

その結果、小説・エッセイ・架空の書評・詩・漫画・自叙伝・日記・果ては音楽など、実に

多彩な作品が出揃いました。テーマを除いて一切の一貫性がなく、何とも雑誌的な一冊になりました。


最高の三十代、というテーマを掲げる。

一見お茶らけているこの行為に付随している感情や背景は、決して楽しいものばかりではありません。何故なら三十代を迎えるためには、まずおおよその場合ゼロ代と十代と二十代を乗り越える必要があり、そしてそれはエスカレーターに乗っていれば勝手に次階へ着く、といったような容易いものでは無かったからです。人それぞれの困難や辛苦がこれでもかとやってきて、それらをどうにかいなして躱して、時には心身がバラバラになりそうな気持ちを抱えながらもどうにか息をし続けて、そして辿り着けるのが三十代です。

それらを乗り越えた今は自分を取り巻く何もかもがバラ色に輝いて見える、と言うことは、残念ながら全く無いです。むしろ激しく変動し続ける世界だとか果てしなく退行し続ける社会だとかかつては感じなかった肉体の衰えだとか、その他諸々しんどいことが日々新たにコンニチワしてくるので、どちらかと言えば、連日連夜濁った灰色やくすんだカーキをぶちまけたような名状しがたい色味をした億劫さを抱えたまま、目の前にある生活をしています。そしてそれは三十代を経て以降もきっと続いていくのだろうと思います。

それでもなお、そうだからこそ、そんな日常を直視したその上で、私たちは今の自分が今ま

での自分の中で常に最高であるし、そしてそれは日々更新を続けるものである、そう在り続けたい。そう思っています。


こんな酔狂な企画に乗ってくださった皆さま、そしてその酔狂の結晶であるこの本を手に

取ってくださった皆さま、本当にありがとうございます。


文責 こんぶトマト文庫 九鬼将司

※この文章は、2022年10月27日より茅ケ崎の喫茶店おもて珈琲さんにて行なっている企画「読む楽しみ、編む愉悦」にて頒布した冊子の一部となります。

それゆえに書き方が「おもて珈琲さん店内で読むもの」という体になっている箇所があります。ご容赦ください。焼うどんが気になった方は是非ともおもて珈琲さんへお越しください。ケーキも美味しいです。



この度「読む楽しみ、編む愉悦」と銘打ち、田畑書店のポケットアンソロジー(以下PA)というものを茅ヶ崎の喫茶店・おもて珈琲さんの店内で商う企画を行なうことになった。

ヨーコさんとこんトマさんの秋の読書三昧 チラシ

anthology アンソロジー・陶と絵と、文学と フライヤー表面

anthology アンソロジー・陶と絵と、文学と フライヤー裏面



PAとはどういったものなのか詳しくは後述するが(ブログ注 下記バナー参照ください)、ざっくばらんに言ってしまえば「お気に入りの短篇小説やエッセイを一冊の本にまとめて、君だけの最高の一冊を作ろう!」といったものである。主にパブリックドメインとなっている小説、芥川龍之介や太宰治など、の短篇が一冊の「リフィル」にまとめられており、それを「ブックジャケット」に編んでいく、というものとなる。とても業の深い良い遊びだと思っている。

今企画に当たり、まずはPAに収録されている作品を読んてみることにした。ここでラインナップを一読した時点で「ああこれ読んだことある、面白かったなァ」といった風に悠然と構えられたなら非常に気楽なものだったのだけど、お恥ずかしながら「ワァ、知らない作品だ!オッ、こっちはそもそも作者も知らない!」といったことが頻発したため、後の作業が大変難航した。何せこのPA、企画開始当初では合計139作品が収録されている。販売のスペース・お客さんの利便性の都合上、その全てを採択することは当然出来ず、打ち合わせの結果、43作品を選定することになった。「じゃあ43作品だけ読んだらいいんですね!」となるはずもなく、手持ちのリフィルや青空文庫を駆使して亀の歩みの如き遅読で一作品ずつ読み進めていった。


これに類する作業をされたことがある方ならおわかりいただけるだろうが、大まかに二段階の波が来る。

最初にやってくる波は

「次から次へ足していっても全然43に到達しない!」

であり、次にやってくる波は

「これも加えたいけれど43なんてとうに通り過ぎたわ!」

である。

調子こいて遠慮なく足し算した結果、引き算がとても辛い。一体全体私は何様のつもりだという気持ちをグッと堪えながら、数々の作品を泣く泣く不採択とした。先に述べた「業の深い」というのは、ここで湧き上がった感情に類似したものに起因する。

数々の作品を誰に気兼ねするでもなく手前の自由に取捨選択するという作業は、名状しがたい背徳感がある。


そうやってちゃちな辣腕をぶんぶこ振り回している中で、ふと

「自分でも一冊編んでみるか」

と考えた。

起点となったのは、梶井基次郎の『檸檬』だった。

これは数少ない既読の一作だったのだが、この度改めて読んでみるとその面白さに震えた。その際に得た感覚を元手に編まれたものを「愛おしく滑稽な人びと」と名付けてみた。各作品を選んだ理由やその他諸々は本紙の裏面に記載されているので、おもて珈琲さん特製焼うどんの出来上がりを待っている間にでも読んでもらえたらと思う。「愛おしく滑稽な人びと」についても、自前で編んだものを期間中棚に置かせてもらっているので、店内で自由に読んでいただければなお嬉しい。


滑稽、とは何だろうか。

辞書によると、滑稽とは

「①おもろしろおかしく、巧みに言いなすこと。転じて、おどけ。道化。諧謔。②いかにもばかばかしく、おかしいこと。」(広辞苑第七版)とある。

この②の例文に「本人は大真面目だが、はたから見れば滑稽だ」と書かれている。そう、誰かしらの大真面目な様というものは、傍から見るとなかなかどうして可笑しみに溢れている。我が身を振り替っても覚えがあり、周囲の人びとに対してもそういう感情を抱いたことは一度や二度ではない。


しかし、それはつまり正反対に転じれば、傍から見ている分にはどうしても滑稽であるし何をしたいのかわからない所作の中にこそ、当人にとっての真摯さが込められているのではないかと思う。

可笑しいことは、表層的には笑いのタネとされてしまうものであると同時に、その奥底に潜在するその人の魂を知る契機でもある。先の『檸檬』にしてもその他の作品にしても、傍から見れば何とも無様で滑稽な姿を晒しているけれど、誰もがその瞬間に対して真剣だ。

無様を晒さぬよう周りに合わせて自分を曲げて、誰かの滑稽を常に笑う立場を固辞し続けていれば、きっとまぁさほど嗤われずに日々をやり過ごしていけるのだろう。しかし、自分の根底がそうさせてくれない、そう在ってしまっては自分が損なわれてしまう、衆目に己を曝け出そうとも己が己であることを提示する。

それは無様で格好良い。

だからこそ僕は、滑稽を愛おしく思う。 

今年の秋も、読書週間にあわせて(かこつけて)いろいろな催しを予定してます。

こんぶトマト文庫は、茅ケ崎にある喫茶店・おもて珈琲さんにて先日ツイッターでも告知させてもらったこちらをやる予定です。これもちゃんとブログにまとめなければですね…


そして今回も一箱古本市を開催します!

日程:11月3日(木・祝)&11月6日(日) 11時~16時

場所:BOOK PORT CAFE

※11月3日については、BOOK PORT CAFE定休日のため一箱古本市開催の時間帯のみ開店となります。ご了承ください。

→3日も通常営業と同様に「10時開店、18時閉店」となりました。


3月・7月に開催した一箱古本市については私の持ち出し企画でしたが、

今回は上記のようにお休みの日に開けてもらうなど、BOOK PORT CAFEさんに諸々ご面倒見ていただくこともあり、ならばということでこんぶトマト文庫とBOOK PORT CAFE共同での開催としました。いつもお世話になっております。よろしくお願いします!

またBOOK PORT CAFE店内でも企画を予定しているとのこと。そちらも一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。


そして今年もお店の近くにあるおむすび屋・はますかむすびさんに、11月3日限定でおむすび弁当を作っていただく予定にしています。

事前予約・数量限定での販売になりますので、その旨ご了承ください。詳細が決まりましたらまた改めてご連絡いたします。

写真は第1回の際に作っていただいた「こんトマむすび弁当」です。大変に美味しかったです。今年はどんな感じになるのか今から楽しみ。

→今年のお弁当の写真を頂戴しましたので貼り替えました。栗ごはんむすびの入ったボリューム満点おむすび弁当です。

11月3日(木・祝)限定でこしらえてもらいます。10月26日(水)までの事前予約制、お値段ひとつ800円となります。はますかむすびさんのご飯はとても美味しいので、全部美味しいんですけれど何よりも米が美味しいので、ぜひご賞味いただければと。

※出店者の募集は終了しました。


また、現在一箱古本市の出店者の募集をしています。

定員は各日3組、

応募者多数の場合は抽選を行ないます。

締め切りは10月9日(日)17時59分です。

同日20時ごろにBOOK PORT CAFE店内で抽選を行ない、当落を応募者の皆様にご連絡します。

→の予定でしたが、10月9日14時現在、両日とも定員割れしています。

なので締め切りを

【10月16日(日)17時59分】

に変更します。

また、抽選ではなく先着順での受付に変更とさせていただきます。

よろしくお願いします!


基本的な募集要項については従来と変わりないので、以下のブログを参照し、第一希望・第二希望の日程を明記しご連絡ください。


去年の11月にやってみるかとやってみて、その後定期的に開催している一箱古本市、気が付けば始めて1年経ちました。あっという間です。これまでの回も出店者様満員御礼、ご来場の方も多く賑わい、おかげさまで難なく続けてこれています。ありがとうございます。


きっと今年の11月までもあっという間だと思うので、慌ただしく楽しんでいこうと思います。


ご来店・ご応募お待ちしています!

BOOK PORT CAFEの店主、ようこさんと共に"游書簡『舫』"というものを作っています。もやい、と読みます。



去年の長月から始めて、三号までは隔月ペースで、四号からは少しペースを落として三カ月に一回のペースで作成しています。続く五号は文月の頭に刊行予定となっています。


書簡、と銘打ってあるように、これはひとつの手紙のようなものです。

こういった手製の冊子や製本された書籍は一般にZINEやミニコミなどと称されることが多いですが、作ってる当の本人たちにはあまりそういう呼称を冠する気が起きず、それゆえに、書簡。



こんな内容のものになります。


〇表紙

題字と目次になります。

「舫」という字は、私達とご縁ある方々に書いていただいています。号数でもある左上の切手絵は、その方にちなんだロゴを描かせてもらっています。


〇羅針本

文・BOOK PORT CAFE店主

「羅針のように自分の在る位置、そして進む方向を指し示す本のこと」と定義し、毎号一冊の本を紹介しています。

これまで紹介した本

一号:奇跡の本屋を作りたい/久住邦晴(ミシマ社)

二号:常世の舟を漕ぎて ~水俣病私史~/語り 緒方正人 聞き書き・構成 辻信一(世織書房)

三号:海からの贈り物/アン・モロウ・リンドバーグ 訳 吉田健一(新潮社)

四号:蠅の王/ウィリアム・ゴールディング(新潮社・早川書房)


〇冒頭小説

著作権が失効し、パブリックドメインとなった短編小説等の冒頭2000文字余りを掲載しています。途中400文字までは表面に、残り1600字ほどは裏面に記載されています。

該当の作品が収蔵されている文庫はBOOK PORT CAFE店内にて販売しています。

これまで掲載した小説

一号:魔術/芥川龍之介

二号:運命論者/国木田独歩

三号:人形の家/ヘンリック・イプセン

四号:グスコーブドリの伝記/宮沢賢治


〇ワンダリング フロム ブックス

文・こんぶトマト文庫店主

放っといたら本の話ばかりすることになるので、本から離れたことを書いています。

これまでの話

一号:最初のご挨拶文

二号:VHS

三号:レコード

四号:山陽西小学校ロック教室(映画)

我ながら、取り留めも無ければ落ち着きもない迷走しきりな一頁です。そういう感じです。


〇水脈

文・BOOK PORT CAFE店主

水脈(みお)とは「船の通ったあと。航跡」のことをいいます。徒然に思うままが綴られています。


〇裏面

今号の題字を書いていただいた方の事の紹介、BOOK PORT CAFEの店舗情報等を記載しています。



現在BOOK PORT CAFE店頭のほか、主に近隣のご縁あるお店に置かせていただいたり、時々どこかしらに出店する際に携えたりしています。
無料でお渡ししているものになりますので、お見かけした際にご興味ありましたら、手に取っていただけると嬉しいです。