今週の書評で気になった本 3月第1週

3月2日(土)毎日新聞書評欄より


書名:ソング&セルフ 音楽と演奏をめぐって歌手が考えていること

著者:イアン・ボストリッジ

訳者:岡本時子

出版社:アルテスパブリッシング

価格:2,860円(税込)

ISBN:978-4-86559-288-7

自分はこれらの曲を演奏すべきなのだろうか?

自分にははたしてそんなことをする権利があるのだろうか?

自分自身のアイデンティティは、ことばや音楽になって提供されている数多くのアイデンティティにどのようにつながっていくものなのだろう?

また作曲家や詩人のアイデンティティにどうつながるのだろう?(本書第2章より)


オックスフォード大学で近代史を専攻し博士号を取得している著者による、音楽が持つ「ジェンダー」「人種」「死」のテーマに向き合った評論集。

日ごろ街中で生産され消費されている娯楽物としての音楽に浴している身としては、すぐさまに音楽とそれらのテーマを繋げることは難儀な話かもしれない。


ふと思い出したのは、ギリシャ-トルコ間の戦争によって住処を奪われ国も失った民の音楽、レベティコ。それを主題とした漫画『レベティコ -雑草の歌』(サウザンブックス社)でも、音楽のアイデンティティの話が出ていた。


何かに対して誠実であることを志した時、その裏側の裏側、物事の心髄に至るまでを知るべきであると思っている。少なくとも、そう構えるべきであり、それは容易い「理解」からは程遠い道のりでもある。

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